誕生日会の出来事

2学期が始まって2週間。おばけ組(年少)のAちゃんは、夏休み明けから朝の会で今日のニュースを発表できるようになった。

ただ、すぐには言えない。言うまでに、なかなかの時間がかかる。なかなか言えないので先生が、「(言うの)やめる?どうする?」と聞くが、本人の言うという意思はかたく、皆はAちゃんが言えるのを待つ。

言うまでのこの時間、たった3年しか生きていない彼女の小さな体の中の心の中で、一体何が起きているのだろう。この時間を切り上げず、取り上げず、待ってくれる。だから、心を手離すことなく育っていけるのか。自分の心をコントロールする力を育んでいくのだろうか。

この日は、H ちゃんのお誕生日会。朝の会では誕生児の好きなところを言うことになっている。

おばけ組の息子は、今まで朝の会で発表したことがなかった。理由を聞くと「恥ずかしいから言いたくない。パイン(年長)になったら言う」とのこと。言っても言わなくても自分で決めたことならどちらでもいいと思う。

でも、この日初めて皆の前で発表することができた。「Hちゃんの好きなところは、……サッカーしてるところ」

なぜ言えたのか、帰りの道中聞いてみた。「(他の人が)言ってて、いいなーと思って、言いたくなった」と。きっとAちゃんの頑張って頑張って言ってる姿を見て、息子も何かを感じたのだろう。そして、温かく見守ってくれる仲間たち大人たちの存在も大きかったのだろう。

時間はかかる。でも、その時間はAちゃんだけでなく、他の子にも大きな影響を与えている貴重な時間で、この時間を大切にしてくれるこの場が本当にありがたいと思った。

Aちゃんの、そして息子の、自分で言うと決めて言えた後の、あの嬉しそうな顔。あの笑顔は、きっと私の一生の宝物になると思う。この場に立ち会えること、この場を感じられること、それこそが、子育ての歓びなのかと思う。

今日の園長 おばけ母 ak