お母さんになる 2

朝の会の出来事。

年中組の男児が泣いていた。理由はみんなわからない。

いつものようにまずは年長組が走る。
泣き止まない。
次は泣いている男児と仲のよい年中組男児2人がかけ寄る。
やっぱり泣き止まない。
「そらちゃんがいいんじゃない?」
娘の名前が出てきた。
!?!?
私の抱く私の子の印象は、どちらかというならばいつも誰かに助けてもらっていて、泣いているお友達を助けてあげられるような子ではない。
「へ!?」って思う1日園長。
そらは困った顔。隣りに座った年少さんからも
「そらちゃん頼んだよ」
それでも出ていかず今度はなんと、1人の男児が
「この通り、お願いします!」
となんと土下座風にお願いしてきた。年長さんまで娘の前で次々と土下座。「土下座」って聞くとなんかあまりいい感じには聞こえないけど、それがまたすごく可愛いい光景で。思わず園長忘れて、私がその子達に土下座を返したくなってしまった。
そこまでされてもそらから出てきた言葉は
「ちょっとむり」
やっぱりそらには荷が重いよね。そうだよね。
それでもあきらめずに声をかける園児達。
「そらちゃんならできる!」
と手を引かれ泣いている男児の前に行く。男児からの言葉は
「ふーちゃんがいい」
残念、そらではなかったのだ。
今度はふーちゃんが男児と話す。
「お母さん」
普段登園時、この男児がお母さんと離れるのが嫌だと泣いている子ではない。今朝はきっと何かがあったのだ。そういう時もある。それをみんながよくわかっているから
「じゃあ私が今日はお母さんになるね?」
「お父さんは?」
色々な声が飛びかう。色々な思いやりが飛びかう朝の会。
男児は泣き止んだ。
一度そこで朝の会が進んだ。私もこの件は終わったと思っていた。
けど、その後、少ししてからたおくんが先生に「もう◯◯くん大丈夫だね」と言ったらしい。
たおくんは彼の事を終わらせずに気にしていたのだ。
お弁当の時間も、私の後ろで誰かが困っていたらしく「じゃあ。次は私がお母さんになるね」と言う会話が聞こえてきた。
困っている子がいたら心を寄せる子ども達。それはきっと「特別な事」ではなく「当たり前な事」なんだと思っている。
思いやりに溢れているこの場所で、私が彼らから学ぶ事が多い。
娘に家で聞いてみた。そらが出たのに「ふーちゃんがいい」と言われた事についてどう思ったのか。
「最初からそらちゃんではないと思ったから、ふーちゃんが出てきてくれてよかったって思ったよ?」
私は、そらが荷が重いと思って「ちょっとむり」と言ったと思っていた。でも、そうではなくて、そらは彼をみて自分ではないと判断したと彼女の話しから受け取れた。
私は子どもをなめている。特に自分の子どもをなめているのだ。子どもは私が思うよりずっと深いところにいるのだ。
この日、色々な出来事がありうっかり写真を撮り忘れた忘れん坊園長。入園式の写真を使いました^_^;
年中組保護者 浦田 えり子